【相良 一世】
「美羽ちゃん!」
【美羽】
「うっ……ん……?」
【相良 一世】
「美羽ちゃん!……しっかりして」
【美羽】
「あれ……一世?どうしたの、慌てて……」
一世のこんなに取り乱したところ、私、初めて見たかも……。
【相良 一世】
「どうしたって、こっちが聞きたいんだけど?」
【美羽】
「えっと……。私、お風呂に入ってて……
お風呂!!?え、きゃっ――!!!」
【相良 一世】
「美羽ちゃん……っ、急に暴れると、落ちる……」
【美羽】
「ゴメン……でも、どうしよう。こんな格好で……!」
【相良 一世】
「落ち着いて……。
すぐにバスタオルをかけたから、なにも見えてない」
【美羽】
「でも、ちょっとは見えたんじゃ……!!
ふぇ……っ、回る……」
急に動いたから、また、頭がグルグル回って気持ちが悪い。
一刻も早く、自分の足で歩きたかったけれど、
今、歩いたら、倒れそうな予感がする。
【相良 一世】
「……大丈夫だから。ほら、向こうでお水を飲もう。
塩も貰ってきた方がいいかな」
【美羽】
「ごめん……。ごめんね、一世。
また、迷惑かけて……」
【相良 一世】
「ほら、迷惑だとか言わない。
すぐに謝られるのも、嫌いだから」
【美羽】
「ごめ……っ!」
そう言いかけて、慌てて口を噤む。
謝り癖が心底染みついている私は、気を付けないと
すぐに口に出してしまいそうだった。
【相良 一世】
「急がなくていいから……。
ゆっくり、慣れていけばいいんじゃないかな」
【美羽】
「……うん。助けてくれてありがとう、一世」
『ごめん』の言葉を、『ありがとうに』変えられるように。
一世は、私の感謝の言葉に、小さく笑って頷いてくれた。