【???】
「美羽…………」
ふと、誰かが名前を呼んだ。
【???】
「大丈夫……全ては幻。
本当であって、本当ではない……」
【???】
「君が心を壊す必要はないんだ……」
【美羽】
(……誰?)
途切れそうになる意識の中、誰かの声が囁く。
…………優しくて、どこか懐かしい声。
【???】
「忘れなさい………。今は……」
【美羽】
(誰なの……)
荒い呼吸を抑えて顔を上げた先に立っていたのは…………。
強い風が、敷き詰められていた葉を舞い上げる。
木漏れ日が、その人を照らしていた。
見慣れない和服姿のその人が、ジッと私の方を見つめている。
優しい眼差しで――。
どうしてだろう。泣きたいと思うのは……。
私、悲しくなんてないのに。
この人を見た瞬間、涙が溢れ出してきた。
ずっと会いたかった。
でも、会えなかった……。
長い間、待ちこがれていた人と再会した時に似ている。