「暇ですねーー……」
「……暇だな」
二人で顔を見合わせると、ほぼ同時に大きなため息を付いた。
私たちが、この学園なんでも屋に入部して、はや二週間……。
このクラブでは、会長である春臣先輩が、
依頼をもってこないことには、私たちの出番はない。
「俺、今度、野球部の助っ人頼まれてんだ。
ちょっと顔見せにいってくる」
「待ってよ、翔悟君!
私だって、一人で待ってるのは暇だよ」
留守番から一人逃げ出そうとする翔悟君を、私はなんとか引き止める。
「二人とも、ただいま」
「あ!吾妻さん、会長。お帰りなさい」
タイミングよく二人が帰ってきた。
とりあえず、一安心だ。
「暇なら少しは情報を集めるとか、他にすることがあるだろう」
相変わらず会長は、どこか不機嫌そうに眉をひそめている。
「じゃあ何か俺がやる気になるような依頼を持ってこいよ」
「このままじゃ、暇で腐っちゃいそうですよ〜」
愚痴を言う私と翔悟君に、吾妻さんは楽しそうに目を細める。
「じゃあさ。二人ともこの旧校舎の掃除してみない?」
「そ、掃除ですか……」
いくら暇でも、さすがに自分の家でもないのに、自ら掃除しようとは思わない。
しかも、私たちが現在部室としている旧校舎全体の掃除となると、
終わるのは一体いつになるのやら。
「そんなめんどくさいの、自分たちでやればいいだろ」
私より先に、翔悟君がずばりと言い捨てる。
「だめ。僕は肉体労働は専門じゃないから。
君たちや春臣なら元気あり余ってる感じだし」
「いいように、押し付けてきたな……」
吾妻の発言に、会長がボソリと呟いている。
「それに、まだこの旧校舎には、隠し部屋とか
昔の値打ちモノなんかが残ってるって噂があるんだよね」
「なんだか、探検みたいだな」
翔悟君が吾妻さんの話しに反応を示した。
マズい……。
翔悟君って、お宝やら探検みたいな話、意外と好きだったような。
「面白い。行こうぜ、悠希」
悪い予感が当たって、翔悟君はかなりノリ気だ。
「やめようよ。ただの掃除だよ……。分かってる?」
「ああ。掃除付きの探検な」
こうなっては、翔悟君を止めるのは難しい。
結局、私たちは広い旧校舎を、バケツとモップ片手に何日も回ることとなった。
お宝も、隠し扉はいまだに見つかっていないけど……。
掃除で酷使した筋肉痛と、以前より少しだけ綺麗になった旧校舎が残ったのだった。
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