長い足で器用に人を避けながら駆け抜けていく吾妻さんの後を、
私は小走りで追いかけていく。
慣れない着物と人込みで、手を繋いでいなかったらとっくにはぐれていたと思う。
鹿嶋悠希
「吾妻さん、待って下さい!
そんなに急がなくても……」
香荘吾妻
「あ、ごめんね?速かったかな」
香荘吾妻
「君と二人だと思うと、
ついつい気持ちが舞い上がってしまうんだよ。
君と何を見ようかって」
鹿嶋悠希
「吾妻さん。
あまりこういった所に来たことないんですか?」
香荘吾妻
「そうだね。
これが初めてかも」
鹿嶋悠希
「初めて!?」
香荘吾妻
「そんなに変かな?
昔から、こういった場所には連れて来てもらえなかったからね。
堅苦しい行事にしか縁のない、つまらない家だから……」
鹿嶋悠希
(吾妻さんの家って……ちょっと複雑そう)
香荘吾妻
「悠希ちゃん。
あっちの出店で金魚釣りをやってるみたいだよ。
少し見てみる?」
鹿嶋悠希
「あ、はい!」
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