暖かい気持ち

元旦絵。


鹿嶋悠希
「はぁーー……。
寒くなってきたね」

新年を迎え、例年にみない大雪が降った今年は、
辺りを一面の銀世界に変えていた。
ギュッギュッと一歩進むたびに鳴る雪を楽しみながら、
私は一人、近くの神社へと向っていた。

鹿嶋悠希
「あ、あれれ……?」

待ち合わせの場所に付いた私は、
腕を組んで、仁王立ちしている彼の姿に戸惑っていた。
予定では、これから二人で楽しい初詣に行くはずなのだが、
出だしからして躓いた雰囲気が漂っているのは何故なのだろう?

鮎原翔悟
「悠希ーーー……!!」

鹿嶋悠希
「え、ええ……なんで?」

降り続く雪がしっとりと、翔悟君の肩を濡らし、
唇は薄っすらと紫色に変色しかけている。
もしかして……。
考えたくないけど、悪い予感が……。

鮎原翔悟
「お前、また時間を間違えたな!!」

鹿嶋悠希
(ふぇーー……!!)

鹿嶋悠希
「そんな……。約束の時間はお昼の一時のはずじゃ?!」

時計を見ると、確かに一時を示している。
間違ってないはずなのに。

鮎原翔悟
「その時計……止まってる」

鹿嶋悠希
「え、えーー!?」

携帯電話で時間を確かめようと、必死に鞄の中を探してみたが、
肝心な時に見つからなくて……。
こんな時に限って忘れてくるなんて。間抜けとしか言いようがない。

鮎原翔悟
「たく、しょうがねぇーな」

呆れ顔でため息を付いている翔悟君に、申し訳なさ過ぎて
顔が上げられない。

鹿嶋悠希
「ごめんね……」

鮎原翔悟
「まあ、お前のドジは今年に始まったことじゃないしな」

鹿嶋悠希
「本当ーーーに、ゴメン……」

こうなったら、謝るしかない。

鮎原翔悟
「……はあ。
俺、今猛烈に寒いんだよ。
お前のこれ、俺にも貸せ」

鹿嶋悠希
(えぇ……!?)

翔悟君の手が私の方へ伸びてきて、
次の瞬間、引き寄せられていた。

すぐ近くに、翔悟君のニンヤリと笑った顔が見えて……。

鮎原翔悟
「お前が俺を待たせた上に、
マフラーなんてしてくるのが悪い」

鹿嶋悠希
(だからって、これじゃあ……)

いつもよりすぐ傍に翔悟君の存在を感じて、
心臓がバクバクと拍動しているのが分かる。
こんなに大きかったら、翔悟君に気付かれてしまうんじゃないかと心配になってしまう。

鮎原翔悟
「お前の初詣の願い事、ドジを直してくださいで決定だな」

鹿嶋悠希
「いつもここまでドジなわけじゃないよ」

鮎原翔悟
「はいはい。そうだといいな」

鹿嶋悠希
(あ……)

ふと触れた翔悟君の手が、氷のように冷たくて。
一体どれくらいこうしていてくれたんだろう。

鮎原翔悟
「いいから、携帯だけはいつも持ってろよ。
じゃなきゃ、なにかあったんじゃないかって
余計な心配するだろうが」

鹿嶋悠希
「……ゴメン」

もしかして、心配してずっとここで待っていてくれたんだろうか?
私がいつ来ても大丈夫なように……。
でなければ、もっと雪のしのげる場所くらい、いくらでもあったはずなのに。

鹿嶋悠希
「ありがとね、翔悟君」

鮎原翔悟
「あ?なんだいきなり」

不思議そうな顔の翔悟君と一緒に、私はなんとか無事に初詣を終えることができた。
すっかり、私のマフラーを気に入った様子の翔悟君に、
来年の冬には、プレゼントしたマフラーで一緒に来れるよう、
ひそかに計画立てるのだった。


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